エステサロンの正社員、辞めた後にまた雇ってもらえるのか問題

はじめまして、桜井日菜子です。

大手エステティックサロンで7年ほどエステティシャンとして働き、途中からは店長として現場を任せてもらっていました。
出産を機に一度退職し、今は美容業界専門のキャリアライターとして、元同業者や後輩たちの相談に乗りながら記事を書いています。

「エステサロンの正社員、一度辞めたらもう戻れないんじゃないか」

これは私が現役の頃から、そして退職後も、本当によく聞かれる質問です。
私自身も辞める直前まで、同じことをぐるぐる考えていました。

退職を決めた日、当時の上司に「戻りたくなったら、いつでも連絡してね」と言われたのを覚えています。
ただ、その言葉を本気で受け取っていいのか、正直半信半疑でした。

結論から言うと、答えは「会社と辞め方次第」です。
何もかもが会社任せというわけではなく、自分の行動次第で変えられる部分もかなりあります。

今日は元エステティシャンとして、そして業界の動きを追い続けているライターとして、この問題を正直にお話しします。
これから退職を考えている方にも、すでに辞めて復帰を迷っている方にも、判断材料として読んでもらえたらうれしいです。

エステサロンを辞めた後、また雇ってもらえるのか問題の正体

なぜこの不安が生まれるのか

エステ業界は、結婚・出産・介護といったライフイベントで退職する人がとても多い業界です。
女性中心の職場だからこそ、そのタイミングが人生のどこかで必ずやってきます。

そして厄介なのが、「一度辞めた人を積極的に呼び戻す」という文化が、これまであまり一般的ではなかったことです。
私が現役だった頃も、「辞めた人がまた戻ってくる」というケースは、正直かなり稀でした。

店長として現場にいた頃、退職していく後輩たちの多くは「本当はもっと続けたかった」と口にしていました。
仕事自体が嫌になったわけではなく、勤務時間の融通が利かなかったり、ブランクへの理解が得られなさそうだったりすることが、退職の決め手になっているケースが目立ちました。

だからこそ、「辞めたら最後、もう戻れない」というイメージが、業界の中に自然と根づいてしまったのだと思います。
このイメージが先行しすぎると、本当は続けたい気持ちがあるのに、早々に別業界への転職を選んでしまう人も出てきます。

実際のところ、業界の離職率はどれくらいか

不安の裏付けとして、まず数字を見ておきましょう。

ホットペッパービューティーアカデミーが2023年4月に発表した「美容サロン就業実態調査」によると、美容師の離職率は2023年に46.5%まで改善し、過去5年間で最も低い水準になったそうです。
一方で同じ調査の中では、エステ・リラクゼーション・ネイル・アイといったジャンルは、美容師(ヘア)と比べて離職率が高い傾向にあると示されています。

具体的な数値までは公表されていないものの、エステが美容業界の中でも人材の定着に苦労してきたジャンルであることは、現場にいた私の肌感覚とも一致します。
離職理由として一般的に挙げられるのは、長時間労働・休日の少なさ・給与の低さ・人間関係・キャリアアップの遅さといったところです。

「また雇ってもらえる」ケースは実際にある

カムバック採用という考え方

ここ数年、エステ業界に限らず、企業が退職者を再び迎え入れる「カムバック採用」という考え方が広がってきています。
富士通やパナソニック、コクヨといった大手企業でもすでに導入が進んでいる、比較的一般的な人事トレンドです。

背景にあるのは、人手不足だけではありません。
一度社外に出た人材が、他社や異業種での経験を積んで戻ってくることに、むしろプラスの価値を見出す企業が増えてきています。

エステ業界の中で、この動きが特別に確立しているとまでは言えません。
それでも、制度として明確に打ち出す会社が少しずつ出てきているのは、現場を離れて業界を外から見ている私にとっても、うれしい変化です。

技術職であるエステティシャンは、育成に時間もコストもかかります。
その人材を「辞めたら終わり」として扱うのか、「また戻ってこられる関係」として扱うのかで、会社の姿勢はかなり読み取れると思っています。

たかの友梨の「タレントパレット」に見る再雇用の実例

その動きを象徴する事例のひとつが、たかの友梨ビューティクリニックを運営する株式会社不二ビューティです。

2025年8月、退職者とのつながりを維持するためのプラットフォーム「タレントパレット」の導入を発表しました。
退職者の経歴やスキルをデータとして一元管理し、最新の求人情報や人事制度の変更を定期的に届ける仕組みです。

対象になるのは、結婚・出産・育児・介護など、ライフステージの変化でやむを得ず退職した社員です。
正社員としての復帰が難しい人向けに、時間限定・期間限定・スポット勤務といった、複数の働き方も用意されているそうです。

同社はもともと、従業員紹介による「カムバック採用」を年間数名のペースで実施していました。
そこには「特殊な技術を持つエステティシャンに、働き方を変えてでも戻ってきてほしい」という強い思いがあったといいます。

実際にたかの友梨がどんな形で元社員を迎え入れているのか、たかの友梨の社員向け再雇用制度についてまとめた記事に詳しくまとめられています。
子育て中の方の視点で書かれていて、当事者のリアルな感覚が伝わってくる内容でした。

エステティシャンという仕事は、技術を身につけるまでに時間がかかります。
だからこそ「せっかく育てた人材を、ライフイベントだけを理由に手放したくない」という会社側の本音は、私にもよく分かります。

現場目線で見た「戻りやすい辞め方」

店長として何人もの退職・復職の相談を受けてきた立場から言うと、戻りやすさには明確な傾向があります。

  • 引き継ぎを丁寧に行い、円満に退職している
  • 退職理由が会社への不満ではなく、ライフイベントによるものである
  • 在職中の評価や実績がきちんと残っている
  • 退職後も、店長や本部の担当者と最低限の連絡が取れる関係を保っている

逆に、揉めて辞めた場合や、無断欠勤が続いた末の退職では、正直なところ戻るハードルはかなり高くなります。
「辞め方」は、将来の「戻りやすさ」に直結すると思っておいて間違いありません。

私が店長時代に印象に残っているのは、産休に入る前に自分の担当客への引き継ぎ資料を丁寧に作ってくれたスタッフです。
彼女は結局別の道に進みましたが、もし戻りたいと相談してきたら、私は間違いなく歓迎していたと思います。

反対に、繁忙期に突然出勤しなくなり、そのまま連絡が取れなくなってしまったケースもありました。
本人にはやむを得ない事情があったのかもしれませんが、現場としては「もし戻りたいと言われても、正直難しい」というのが本音でした。
辞めるときの数週間の振る舞いが、数年後の選択肢を左右することもある、というのが現場を見てきた実感です。

辞める前に知っておきたい、会社選びの視点

口コミから見える実態

会社によって、再雇用のしやすさにはかなり差があります。
判断材料のひとつとして、口コミサイトの情報も見ておきましょう。

たかの友梨(不二ビューティ)については、口コミサイトOpenWorkで総合スコア3.14(全79,464社中上位18%)という評価がついています。
社員相互の尊重や士気の高さは評価されている一方、待遇面や風通しの良さについてはやや厳しい声も見られました。

項目OpenWorkIndeed
総合評価3.14(5点満点)2.6(5点満点)
特に評価が高い点社員相互の尊重、社員の士気技術研修の充実
特に評価が低い点待遇面、風通しの良さ長時間労働、休憩の少なさ

Indeedの口コミには、繁忙期の休憩時間の少なさを指摘する声もありました。
一方で「未経験からでも技術を1から学べる」という評価も見られ、店舗や配属によって環境がかなり異なる印象です。

口コミはあくまで個人の体験に基づくものなので、鵜呑みにしすぎないことも大切です。
ただ、複数の口コミサイトを横断して見ることで、ある程度の傾向はつかめます。

私が会社選びの相談を受けるときにお伝えしているのは、「良い口コミ」と「悪い口コミ」の両方に目を通すことです。
片方だけを見て判断すると、実際に働き始めてからのギャップが大きくなりがちです。

また、口コミは投稿された時期にも注目してください。
数年前の口コミと最近の口コミでは、会社の制度や雰囲気が変わっている可能性があります。
特に再雇用や両立支援のような制度は、ここ1〜2年で急速に整備が進んでいる分野なので、なるべく新しい情報を優先して見るようにしましょう。

離職率が高い理由と、変わりつつある部分

エステ業界の離職率が高い背景には、施術前後の長時間練習や、営業時間外の勉強会といった「見えない労働時間」の問題があります。
私自身、開店前の自主練で1時間以上早出していた時期もありました。

ただ、この状況は少しずつ変わってきています。
「ママスタッフが働きやすい環境づくり」や福利厚生の見直しに取り組む会社が増えているのは、業界にいた者として実感するところです。

たかの友梨のような再雇用の仕組みも、その流れのひとつと捉えていいと思います。
辞めることを前提にした制度設計というのは、これまでのエステ業界にはあまりなかった発想です。

会社を選ぶ際は、「離職率が低いかどうか」だけでなく、「辞めた人をどう扱っているか」という視点も持っておくと判断材料が増えます。
求人票や採用面接では見えにくい部分なので、口コミや会社の公式発信をあわせてチェックすることをおすすめします。

育児と両立しながらエステの仕事を続ける・戻る方法

公的な支援制度を知っておく

会社独自の制度だけでなく、公的な支援制度も併せて知っておくと、選択肢はぐっと広がります。

2025年には育児・介護休業法が改正され、子の看護等休暇の対象が小学校3年生修了まで拡大されました。
3歳未満の子を養育する労働者に対しては、テレワークを選択できるようにする努力義務も加わっています。

詳しい制度内容は、厚生労働省の育児・介護休業法についてのページにまとまっています。
自分が対象になるかどうか、一度目を通しておくと安心です。

また、子育て中の求職活動を専門にサポートする「マザーズハローワーク」も心強い存在です。
全国に専門拠点があり、キッズコーナーを備えた窓口も多く、過去5年間で約30万人が就職につながっています。

「復職したいけれど、何から手をつけていいか分からない」という方には、まずこうした公的窓口に相談してみることをおすすめします。
会社の制度と公的な制度、両方の選択肢を知っておくことで、交渉できる幅も自然と広がります。

資格・技術を活かして戻る選択肢

エステティシャンの強みは、なんといっても手に職があることです。
ブランクがあっても、技術そのものが失われるわけではありません。

不安な場合は、業界団体の資格制度を活用するのもひとつの方法です。
1972年設立の一般社団法人日本エステティック協会では、エステティシャンの教育・資格認定を行っており、復帰前のスキル確認や自信の裏付けとして活用している方もいます。

  • 退職前の実績や資格を証明できる形で残しておく
  • 業界団体の研修や資格更新の情報をチェックしておく
  • 公的な両立支援制度の対象条件を事前に確認しておく

こうした準備をしておくだけで、「戻りたい」と思ったときの動きやすさがまったく違ってきます。

まとめ

エステサロンの正社員を辞めた後、また雇ってもらえるかどうかは、会社の姿勢と自分の辞め方の両方にかかっています。

業界全体で見れば離職率は決して低くありませんが、たかの友梨のように退職者との関係を制度として維持する会社も出てきました。
円満に辞めること、実績を残すこと、そして公的な支援制度を知っておくこと。

この3つを押さえておけば、「辞めたら終わり」ではなく、「また戻れる」という選択肢を自分の手に残せます。

私自身、退職してからしばらく経ちますが、今でも当時の職場から研修会の案内が届くことがあります。
その一通のメールが、「また戻ってもいいんだ」と思わせてくれる、小さくても確かな支えになっています。

今、辞めるかどうか悩んでいる方、あるいは辞めた後に戻ろうか迷っている方の背中を、この記事が少しでも軽くできたらうれしいです。

最終更新日 2026年7月1日 by hannesh